東京・東上野「田中食堂」へ向かっている。笹塚から30分ほどの電車内でメニューに思いをめぐらせる。事前リサーチで知った名物「ハムカツ」は外せない。ハムカツありきで食堂ならではの定食モノで攻めるか、それとも単品のつまみ攻めか。ごはん↔ビールを天秤にかけつつ、暖簾をくぐった。
こちらは百年食堂という雑誌の表紙を飾ったことで、広く知られるようになったお店。 2015年7月、安倍総理がふらりと立ち寄ったことでも話題に。飲むとすれば、常連客やランチタイムの回転に影響を与えるとおもい13時すぎに伺った。訪ねると、ご主人と息子さんのふたりだけでランチタイムを回していた。調理はご主人。息子さんが客対応だ。
ポイント1呑む、呑まないで支払方法がチェンジ
店に入るなり、すべきことがある。席につく前に、注文しなければならないのだ。写真右手が入口。左手が厨房になる。注文は、左手に見えるメニューケースの横レジがあるコーナーで。息子さんが厨房にいるときなど、タイミングによっては先に席についてもよい。店内に顔を出したタイミングで声をかける。
ちなみに、写真左側にある色紙は安倍総理のもの
4ショットの写真も添えられている
前払いも事前にリサーチ済だったのだが「お会計は?」と聞くと後でけっこうです、とのこと。どうやらアルコールメニューを注文しない場合は前払い。アルコールを注文した場合は後払いになるようだ。
ちょいと一杯派は追加注文する確率が高いから、とおもわれる。そのほうが効率がいいのだろう。いつもながらの罪悪感と背徳感を心の隅に押しやりながらの、解放感。瓶ビールはキリンかアサヒから選べる。アサヒはスーパードライ。呑んでいる客は爺さんがひとり。あとは定食を頼むひとり客や2人組がメイン。ひとり客のなかにはアラサー女子もいた。初めてなのに堂に入る佇まい。間髪入れず、さばの味噌煮を注文。あとで運ばれてきた膳をチラ見したのだが照りの入り具合が絶妙だった。ぜったい旨いぞアレ。次は必ず。
定食マイナス250円で単品、つまりツマミになる。この中から3品、300円、300円、350円のメニューを頼んだ。ほかにもメニューはあるので店内をぐるぐる見渡してほしい。
ポイント2赤ウインナー&目玉焼き
ハムカツをまちながら、思いをはせる。ハムは厚ければいいというものではない。ハムの厚さは衣にソースが絡まり、口の中で三位一体となる時の絶妙のバランスで決まるのである。 とかなんとか、テキトーなうんちくをひねり出していたら、いきなり赤の衝撃。最初のツマミ、赤ウィンナーさんがやってきた。付け合せはキャベツとキュウリ、そしてポテサラ。どうだい、このチープなごちそう。油をまとった輝きがまぶしい。見つけたよおいら、下町の赤いルビーをさ。しょうゆをちょいと垂らし、カプリ。
んまい。
至福の80点。ソースはハムカツのために温存しておきたいので醤油でいただく。
目玉焼き!
隠れているが、同じ付け合せがのっている。これも醤油でいただく。白身から攻める。ちなみに、呑み友(心の中で)の爺さんは「目玉焼き、固め」をアテにしていた。たしかに固くしないとアテにするのは難しい。黄身をディップにするなら別だが。注文時、ハムエッグにしようかともおもったがハムカツとかぶるのでやめておいた。この順番なら正解だ。
ポイント3サックサクのハムカツにかぶりつく
ハムカツといえば、近場の鶯谷「鳥椿」、上野「カドクラ」あたりが有名だ。上野周辺はハムカツの街なのだ。さあ、どんな面構えのハムカツがくるのか。
ハムカツ単品350円也
いい面しているじゃねえか。向かって右側から2番目のハムカツに注目してほしい。うっすら赤身を帯びたハムがシースルーしているのがわかるだろうか。つまりは衣が薄いということ。期待感、マックス。
ハムの厚み。
鳥椿とは逆をいくハムの厚さ。いまどき、薄いほうではないだろうか。でもこれが普通。百年食堂がずっと作り続けてきたハムカツなのだ。ソースとからしをたっぷりつけて一口。ザクッ。ザクッザクッ。ジュワッ。ハムの旨味が追いかけてくる。口の中に広がる渾然一体の小宇宙。口に残った油も一緒にビールで流し込む。
年代物の扇風機
平日の午後。ハムカツをあてにビールを飲む、ぜいたくな時間。長居は無用。付け合せをやっつけて店をあとにした。
午後1時半、もう暖簾はしまわれている。長年培ってきた店の空気、時間、ペースを邪魔してはいけない。ラストオーダー前、飲み友の爺さんは〆のごはんと味噌汁を注文。最後の客になった。爺さん、鳴りっぱなしの携帯ずっと無視してたけど、きっとカミさんからだろう?いいかげん出てやればいいのに。そんな爺さんがいる店。味を超えた何かを味わえる店。貴重だとおもった。
これからもずっと続くことを願いたい。
ごっちゃんでした♪
■基本メモ
住所: 東京都台東区東上野3-5-13
営業時間: 11:00~14:00 17:00~22:00
休日: 土日祝 最寄駅
銀座線稲荷町駅 徒歩3分くらい
大江戸線新御徒町 徒歩6分くらい
(日々つむ編集部みっちー)