NHKが配布している認知症キャンペーンのポスター。『聞こえてますか?「認知症と生きる」わたしたちの声』と題し、認知症と生きる当人の言葉が直筆で綴られています。もし認知症と診断されたばかりの家族がいたら?認知症になった人の声に耳を傾けてみてください。
愛犬家が認知症になるとき
散歩中に知り合った60代の女性から、財布忘れたからお金貸してといわれたことがあります。それが何度か続いて、おかしいなと思っていると他の人にも同じことを言っていたことがわかりました。自然とその女性に近づかなくなりました。そうこうするうちに連れている犬がやせ細っていき、数ヶ月後女性は入院しました。彼女は認知症でした。犬にごはんをあげていなかったそうです。改めて、犬は飼い主がいなければ生きられない永遠の子供なのだと改めて身が引き締まる思いをしました。
認知症の現実
厚生労働省が2015年に発表した資料によると認知症の人の数は2012(平成24)年で約462万人、 早期の予備軍を含めると約400万人。合わせて862万人、65歳以上高齢者の約4人に1人が認知症の人又はその予備群とも言われているそうです。(厚生労働省)
4人に1人、これが現代日本の現実です。では認知症と診断された本人は?
いま日本では、認知症と告知された人たちが「数年で何もわからなくなる」「徘徊を繰り返すようになる」といったマイナスの情報に打ちのめされ、ひとり絶望の淵に立たされてしまう“早期絶望”が問題となっています。
(出典:ハートネットtvブログより)
認知症の人の言葉
これは2015年暮れに放送された「わたしが伝えたいこと〜認知症の人からのメッセージ〜」に寄せられた声をもとに本人の声を社会に伝えるポスターにしたもの。
認知症になった21人のことばです。
・私たち抜きに私たちのことを決めないで!
・腫れ物に触るように接しないで!
・うまく言えないけど話したいことは沢山ある
・何かして欲しいわけではない。ただ普通に生きたい
・認知症になっても人生は終わらない
・忘れちゃうけど今なんとかなっている
・おれは「(名前)」だ
・認知症患者と呼ばないで。認知症と共に生きる人です。(英語付き)
・不便ではあるが不幸ではない
・自分も役立っているんだって思いたい
・出来ることを奪わないで。出来ないことだけサポートして!!
・徘徊ではない。目的があって歩いている
・社会とつながる場があると自信が持てる
・「認知症なの」「あっそうなの」それくらい普通に
・誰かと話したい
・叱らないで笑って許して
・ゆっくり待ってくれればできることはたくさんある
・お医者さん、私の顔を見て話して!!
・自分が壊れていく不安に押し潰されそうです
・認知症と診断されただけでポイっと捨てないで
イメージとは違うことばの数々。ちょっと驚き、考えさせられませんか。「早期絶望」と向き合いながらも前へ進もうとする希望のことばが詰まっています。
ツイッターでは認知症の心象風景を綴ったこんな漫画が紹介されています。
北川なつ著・認知症のある人って、なぜ、よく怒られるんだろう? インタビューhttps://t.co/Lz85nsiUVf認知症をわかりやすく漫画で解説している北川さん。介護のプロでも四苦八苦してしまう現実、家族が悩むのは当たり前です pic.twitter.com/PV99rCfwy5
— 認知症ONLINE(認知症オンライン) (@nichisho_online) 2016年3月12日
みている景色が違うことに気づかされました。家族が悩むことも当たり前なんですね。
認知症と家族が向き合う映画「しわ」
数年前話題になったスペインのアニメ映画「しわ」。認知症をテーマに扱っています。スタジオジブリが日本に紹介し、DVDの販売も手がけています。
スタジオジブリの高畑勲監督はこうコメント。
「しわ」という作品で、アニメーション映画の持つ可能性がまたひとつ広がった、とわたしは思っています。元になっているコミックスがまずそうなのですが、この映画は、誰もが無関心ではいられないが、そのくせ、できれば目をそらせていたい老後の重いテーマを、勇気をもって扱っています。
わたしはひとりの老人として、人間として、そして一アニメーション従事者として、映画「しわ」に心から敬意を表します。
(出典:スタジオジブリライブラリー「しわ」より)
さいごに
いかがでしたか。家族が認知症と診断されたとき、このポスターのことばたちを思い出してみてください。絶望ではなく、希望の光を見出してくれることを願っています。
ポスターはこちらから入手できます。
(日々つむ編集部)