元日本テレビアナウンサーで現在タレントとして活動している馬場典子アナが愛犬(ミニピン)を連れて電車に乗っている写真をSNSに掲載。その様子がペット同伴で電車に乗る際のルールに違反しているとの指摘を受け、ブログで謝罪する事態となった。
これで一件落着、といいたいところだが、謝罪を伝える記事の内容に飼い主界隈がざわついている。
「昨日、ペットと電車に乗っている写真をブログとインスタグラム、ツイッターに載せてしまい、ルール違反では、とのご指摘をいただきました」と報告。自身が利用した東京メトロのルール上は問題なかったようだが、鉄道会社によってルールが異なることを知り、「昨日もしJR東日本に乗っていたとしても調べずに同じことをしていたかと思うと、改めて、ルールを確認することの大切さや、より厳しい基準で考えるべきであることを痛感しています」とした。
馬場は自身が公開した写真について「今回、ペットが顔を出していたことで、犬が苦手な方に不快な思いをさせてしまったり、ルールとマナーを守っていらっしゃる愛犬家の方にご迷惑をおかけしてしまったり、詳しく知らない方が大丈夫だと誤解してしまったり、ということが起こりかねない」として削除したことを報告。「今後、このようなことのないよう気をつけていきたいと思います」とつづった。
(出典:日刊スポーツ)
ざわついているのは、このくだり。
自身が利用した東京メトロのルール上は問題なかった
問題なかった、とおそらくペットを飼ったことのないスポーツ紙記者に解釈させてしまった馬場アナの弁明をブログから引用してみる。
昨日乗っていたメトロのサイトでは、
「子犬、猫、鳩その他これらに類する小動物(猛獣及びヘビの類を除く)は、長さ70センチメートル以内、縦・横・高さの合計が90センチメートル程度の容器に収納し、重量が10キログラム以内のもので、他の旅客に危害を及ぼしたり、迷惑をかけるおそれがないと認められるものに限り持ち込むことができます。」
とありましたが、調べていくうち
各鉄道会社のルールに
かなり違いがあることが分かりました。
たとえばJR東日本では、
布製バッグでは乗ることが出来ず
料金もかかること。
また大阪市交通局では、
姿を見えなくするように定めていること。
など、
恥ずかしながら初めて知りました。
昨日もしJR東日本に乗っていたとしても
調べずに同じことをしていたかと思うと、
改めて、
ルールを確認することの大切さや、
より厳しい基準で考えるべきであることを
痛感しています。
はっきりと東京メトロがOKだったとは書いていない。しかし、そのように解釈できる表現内容となっている。
では、社会的影響力に鑑みてSNSに投稿した写真をスクリーンショットで引用してみた。
出典:インスタグラムのスクリーンショット
どうやら馬場アナは東京メトロのホームページに書かれているルールの内容を、顔出しOKのように拡大解釈してしまったらしい。
「子犬、猫、鳩その他これらに類する小動物(猛獣及びヘビの類を除く)は、長さ70センチメートル以内、縦・横・高さの合計が90センチメートル程度の容器に収納し、重量が10キログラム以内のもので、他の旅客に危害を及ぼしたり、迷惑をかけるおそれがないと認められるものに限り持ち込むことができます。」(引用:東京メトロ)
たしかに「他の旅客に危害を及ぼしたり、迷惑をかけるおそれがないと認められるもの」で顔出しOKと誤解できなくはない。しかし、その直前に書かれている「長さ70センチメートル以内、縦・横・高さの合計が90センチメートル程度の容器に収納」を見過ごしてしまっている。
「(ペットを)容器に収納」は冷たく感じる表現かもしれないが、ペットの扱いはあくまでも「手回品」、モノだ。顔を出している時点で容器に収納できていない。収納できていないと毛が飛び散ったり苦手な人やアレルギーの人にも迷惑をかけたりする可能性がある。
東京メトロのルールでもペットを容器に収納=顔出しはNGなのだ。
飼い主界隈がざわついているのは、あたかも東京メトロは顔出しOKかのような表現をしていること。マネする人が出てきてトラブルが続出し、より厳しい規制が設けられかねないと危機感を抱く内容だからだ。
「容器に収納」とはどういうことか、より厳格にルールを明文化しているJRの例が参考になる。
JRのルール
小犬、猫、鳩またはこれらに類する小動物(猛獣やへびの類を除く)で、
- 長さ70センチ以内で、タテ・ヨコ・高さの合計が90センチ程度のケースにいれたもの
- ケースと動物を合わせた重さが10キロ以内のもの
手回り品料金は、1個につき280円です。ご乗車になる駅の改札口などで荷物をお見せのうえ、普通手回り品きっぷをお求めください。
ケースのサイズは、メトロ、JRともにほぼ同じ基準となっている。
・東京メトロ〜長さタテヨコ90センチ
・JR〜長さ70センチ以内で高さタテヨコの合計が90センチ程度
JRだとこんな感じになる。
△長さは最大70センチ以内と唯一具体的だが、これは隣席とのカンケイで制限が設けられているようだ。ただし、結論からいうとサイズはグレー。90センチ「程度」という言葉づかいに「のりしろ」を感じる。
というのも、小さすぎるケースは海外では虐待と捉えられたケースもあって、(JALカーゴの顧客向けリリース)、JALなどの航空各社はこのIATAの国際規格に準じている。(こちら)
というわけで、最大の問題はサイズではなく結局は顔出しなどのマナーに行き着く。JRではさらに詳しい注意書きが明記されている。
(ペットを持ち込まれるお客様へ)
・ケースに入っていない場合や、ペットケースの制限(長さ70センチメートル以内で、タテ・ヨコ・高さの合計が90センチメートル程度。ケースと動物を合わせた重さが10キロ以内)を超えるものは持ち込むことはできません。
・小動物(ペット等)を持ち込まれる場合は、駅や車内ではケースから出さないようお願いいたします。
・ペットは全身が入るケースに入れてください。抱いたままやバッグに入れた状態ではご利用いただけません。
・布状で形態が固定しないもの(ドッグスリング等)については全身が入っていてもご利用いただけません。
・ケースに車輪や手押し用の取っ手等がついている場合(ペットカート・ペットバキー等)については、車輪や手押し用の取っ手等の部分を含めた全体の大きさがペットケースの制限内である場合のみ、有料の手回り品としてお持ち込みいただけます。
(一般的なペットカート・ペットバギーの場合、全体でペットケースの制限を超えるため持込みはできません。)
・なお、ペットが入るケースと車輪や手押し用の取っ手等が分離した状態であれば、ケースがペットケースの制限の範囲内で、かつ車輪や手押し用の取っ手等ケース以外の部分が無料手回り品の制限の範囲内であれば持ち込むことができます。ただし、この場合であっても、ケース以外の部分等に突起があるなど、他のお客さまに危害を及ぼすおそれがあると判断される場合等については、お持込みをお断りいたします。
△数々のトラブルを踏まえてのことだろう。より具体的な規制内容が明記されるようになっている。
NG例を見たらわかるが要は顔を出すな、ということに尽きる。ソフトタイプのバッグやスリングはOKとされているが「収納」できていないものはやはりNGなのだ。
スリングの場合は・・・。
△トートバックのような蓋のないタイプはNG。JRではわざわざ明文化しているが東京メトロでもダメ。毛が飛び散る可能性がある以上、アレルギーを持つ乗客に迷惑がかかってしまう。
△これはOK。巾着が付いていて顔をすっぽり覆うことができる。網目になっているので呼吸しやすく毛が飛び散る心配もない。
このタイプを利用していて駅員や他の乗客から注意されたという話は聞かない。東京メトロのルールをもう一度確認しておこう。
東京メトロのルール
・他の旅客に危害を及ぼしたり、迷惑をかけるおそれがないと認められるもの
・長さ70センチメートル以内、縦・横・高さの合計が90センチメートル程度の容器に収納
ふだん電車を利用する飼い主たちは「顔を入れてください」「容器に収納」のルールを守っているという認識で、スリングでも巾着などで覆うものがないタイプは使っていない。
△ソフトタイプのキャリーバッグもチャックで網目のふたを閉められるものを使う。
それが、日常的に公共の交通機関を利用する愛犬家の暗黙のルールとなっている。馬場アナのように、いつでも顔が出せる状態のキャリーバッグやスリング(写真ではただのトートバッグにも見える)は東京メトロはもちろんどの公共の交通機関でも使ってはいけないのは常識なのだ。
たとえ、東京メトロが顔出しOKだとしても、もし顔を出した状態で駅構内や車内にいたら、他の乗客に注意を受けるのは時間の問題。けんか腰で罵倒してくる者がいて大きなトラブルになったケースも耳にしているので気をつけてほしい。非はペットの顔を出していた側にある。
というわけで、馬場アナの謝罪記事では東京メトロがあたかもOKのような言い回しになっているが絶対マネしないでほしい。ついでに、東京都が運営している都営地下鉄やバスのルールはこうなっている。
車内に持ち込めるもの
縦・横・高さの合計が250cm以内・重さ30kg以内のもの2個までを手回り品として車内に持ち込むことができます。ペット等の小動物については、他のお客様のご迷惑とならないよう完全なケースに入れたうえで、手荷物として持ち込むことができます。
東京都交通局のルールも、要は「顔出しするな」ということ。
ペットの顔出し乗車によるトラブルが多発している現状があるため「完全なケース」との表現で注意を喚起しているのだ。
つまり「ペットの顔出し」は各社によってルールが違う以前の問題。それに気づいていないフシのある馬場アナの謝罪記事に、改めて訂正してほしいとの声もあがっている。同じケースが繰り返されトラブルが相次げば、東京メトロもJRと同じような未来=厳しい規制が待っていることになりかねない。都市部に住むわたしたちは動物病院やトリミングサロンなど日常的な近距離移動の手段として電車はバスを利用している。その一つである東京メトロでJRのような厳格なルールになってしまうのは正直きつい。
ちなみに、東京メトロや都営地下鉄はペットカードOK。実は規制が厳しいJRもOKなのはあまり知られていない。
ペットが入るケースと車輪や手押し用の取っ手等が分離した状態であれば、ケースがペットケースの制限の範囲内で、かつ車輪や手押し用の取っ手等ケース以外の部分が無料手回り品の制限の範囲内であれば持ち込むことができます。
分離タイプの犬用バギーであれば、利用OKということ。
△これはOK。座るときはカート部分を畳んでケース部分だけを座席の足元に置くことができる。
△これもOK。サイズはオーバーしているが「程度」の範囲内。とにかく「顔出し」しなければ固いことはいわないよ、というスタンスだ。
△犬編集長も利用中
手回り品切符の買い方
ペットを新幹線などのJR系に乗せるためには「手回り品」とよばれる切符を購入する。人間と同じではなく荷物扱いになり座席代は必要ない。値段はどこまで行っても「280円」。
普通手回り品切符とかいてある。なにもいわれなければサイズクリアとなる。東京メトロは無料だ。
さいごに
「今回、ペットが顔を出していたことで、犬が苦手な方に不快な思いをさせてしまったり、ルールとマナーを守っていらっしゃる愛犬家の方にご迷惑をおかけしてしまったり、詳しく知らない方が大丈夫だと誤解してしまったり、ということが起こりかねない」
謝罪記事を読むと、馬場アナはペットと電車に乗ること自体が新鮮でイベントや旅行気分だったのかもしれない。非はないかのような表現で謝罪しているが、非はある。明らかな非があったことを認めた上で謝罪すべきだった。記事だけだと、東京メトロは「顔を出してもいいんだよ」という誤った情報が広がりかねない現状だ。
電車を利用する多くの飼い主が東京メトロや都営地下鉄の駅員にいわれるのは、とにかく「顔を入れてください」ということ。もし守らなければ、駅員に見つかる前に他の一般客に烈火のごとく叱られる場面を何度も見てきた。「おとなしいんで大丈夫ですよ〜」と正当化する飼い主もいるが、アレルギーや苦手な人がいる以上、反社会的な行為と言わざるをえない。
東京メトロでも明記していないだけで駅構内や電車内でのペットの顔出しはNG。「ルール上問題なかった」わけではないことを知っておこう。
馬場アナの謝罪記事はこちら。
(日々つむ編集部)
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